phoneは何の電話?

レッスンで分詞構文の解説をする時、

Playing the piano, I didn’t hear the phone was ringing.
ピアノを弾いていたので、電話が鳴っているのが聞こえなかった。

という例文を使うのですが、この文を訳してもらった時に、the phoneを「携帯」と訳す人が増えてきたように思います。

特に中・高校生とか若い人に「携帯」と訳す人が多いようです。

初めてその訳を聞いたときはちょっとしたジェネレーションギャップを感じましたね。中高生にとっては phone =「携帯」なのかもしれないですね。固定電話を使ったことがない中高生は多いと思いますし。

そういえば、20年ほど前ですけど、高校生を教えていたら「レコードを見たことがない」いうのを聞いてショックを受けたことを思い出しました(笑)。あと、つい最近も、「カセットテープは知ってるけど実際に見たことない」とかですね。記録媒体は進化しているので特にギャップが激しいのかもしれません。

ところで、上記の例文でのphoneは、固定回線(landline)を指している可能性が高いのですが、その理由は分かりますか。

それは、theが使われているからですね。このphoneはいきなり話に出てきたのにtheが使われています。つまり、「どれ」かを特定する文脈がなくても特定できるものという扱いになってますので、たぶん自宅の固定電話かなと思われます。

the fridge「冷蔵庫」とか、自宅に備わっているものはtheが付くことが多いです。the intercom「インターホン」もそうですね。

もちろん、the phoneを特定された携帯電話と理解することも可能ですが、上記の英文でそう取ろうとすると、「ピアノを弾いていたので、”その”携帯電話が鳴ったのに気が付かなかった」の意味になり、他に文脈がないと状況がピンとこない感じになります。この文の前に、どの携帯電話かを特定する文脈があるという前提なのだろうかと悩んだり、自分の携帯を指すならmy phoneで、友人や家族のならTom’sとかmy sister’sなどと「誰の」が使われているはずなので、わざわざtheにしているのはそれ以外の携帯があるのかもとか、いろいろ状況が不明になるので、そう取りにくいということですね。

多くの場合、英文は複数の解釈が可能で、最終的には文脈や状況に応じてどの解釈が一番著者が言いたいことなのかを察することが必要になります。その際に、今のようなtheかmyかといった、ちょっとしたことがヒントになることは多いです。どんな単語や文法も著者は意図があって選んでいるので、それを逆算して著者の意図を察するということですね。これに気をつけると行間を読み取りやすくなります。