Oxbridgeの面接を受けてみませんか?
オックスフォード大学とケンブリッジ大学の入試面接で、受験者に問われた質問を集め、それぞれに著者の考察が書かれた本です。
収録されているのは60問ほどで、科学的なものから、Do you think you're clever?といった、実際に質問されたら面食らうようなものまでさまざま。ちなみに、タイトルはケンブリッジ大学の法学部での質問です。
実際に面接試験を受けなくても、質問に触れることによってその気分が味わえ、どうやって面接官を納得させるかを自分なりに考えるのが楽しい本です。使われている英語はそれほど難しくありませんが、なかなか奥深い考察がなされているので、中上級者にとっては良い読解練習になるはずです。
ちなみに、続編"Do You Still Think You're Clever?: Even More Oxford and Cambridge Questions!"も出版されてます。「まだ自分のこと賢いと思ってんの」はすごいタイトルですね(笑)
気軽に読める短編ミステリーです。
洋書を読むコツは、最後まで読めそうなものを選ぶことです。途中で嫌気がさしてしまってはもったいないですからね。この点、短編は、全体的な長さが短いだけではなく、序章というか、導入部も短いため、面白くなるまでが速く、その分、いったん面白く感じればそのまま最後まで行ける確率が上がります。
本書も、語数はおよそ6000語、約20ページです。TOEICのダブルパッセージ20個分というと気が滅入るので内緒。
しかもKindle版だと100円です。さらに、アマゾンプライム会員は無料。
あらすじは、
ある男性が自宅の居間で死んでいるのが発見される。しかし、ドアにはカギが掛けられており密室状態。しかも、その男性の死因は墜落死だった。果たして、誰がどのようにして彼を殺したのか。主人公の、Jacqueline (Jack) Daniels警部補が謎に挑む。
という感じで、いわゆる密室モノですね。
本書の面白いところは、犯人が比較的あっさり判明し、なおかつ、密室の謎が解けるように犯人により数々の手がかりがわざと残され、警察との知恵比べとなっているところです。短編ということもあって、Jackが次々と謎を解いていくところは爽快です。また、全体的に軽いタッチで書かれていて、随所にユーモアが感じられるため、気軽に読むことができるでしょう。また、Jack視点の一人称で書かれているということも読みやすさのポイントです。
ちなみに、彼女が1つだけ最後まで解けなかった「なぜ魚の形をした赤いキャンディを犯人は手がかりとして残したのか」の答えを、最後の数行で思いつくというシーンがあるのですが、この答えは読者には直接伝えられず、Jackがほのめかすだけで終わっています。ミステリー好きの方なら、きっと分かるはずです。英語の表現にまつわる謎ですので、ぜひ、挑戦してみてください!
タイトルにある通りクイズの本です。イギリスでは、パブで毎週のようにPub Quizというクイズ大会をやっていまして、それがこのタイトルにもなっています。
雑学を問う、1200問以上のクイズが、分野ごとに68のセットにまとめられて収録されています。
ちなみに、第1問は、
"Which ocean covers approximately one third of the earth's surface?"
「地球表面のおよそ1/3を覆うのはどの海ですか?」
となっています。
本書にかぎらず、クイズ本は
■初心者から中級者でも気軽に読める
■疑問文を読む練習になる
■1センテンスで完結するので、挫折しない
■問題を解きたいという欲求から、全問題文を熱心に読める
(小説などは1センテンスにつきそれほど集中するわけではない)
という点が英語学習者にとって最適だと思ってまして、私の学校の受講生にも薦めています。
さまざまな分野のクイズが出題されるということもあって、時々難しい単語が出てきますが、Kindle版ならその単語を長押しするだけで、単語の定義が表示されますから読みやすいですね。
クイズ本は学習者にとって読みやすいものでもありますが、1つだけ注意点があります。それは、日本人向けに作られたものではないということです。
例えば、本書はイギリスの本ですから、日本人には馴染みのない難しい物も出ます。しかし、それはそういうものだと気軽に解けばいいでしょう。
逆に、日本に関する問題も出題されていて、「こんな当たり前のことがクイズのネタになるのか」と感じて、面白いです。本書でも、
"What is the Japanese mafia called?"
「日本のマフィアはなんと呼ばれますか?」
とか、
"Honshu is the largest island of which country?"
「Honshuは、どの国の最も大きな島ですか?」
などが収録されていて、ニヤリとさせられます。
一言で言うと、マヤ文明の遺跡発掘にまつわる冒険ものです。
主人公はGillian Brightという考古学者の女性です。
あらすじは、
考古学者のGillian Brightは、仲間の学者チームに誘われ、同じく考古学の研究者でもあるフィアンセのFredとともにマヤ文明の遺跡の発掘調査に参加する。
しかし、およそ1500年前のその遺跡を調査しているとき、チームの一人が、遺跡を守るために作られていた罠を作動させてしまい、メンバーたちは遺跡の一室に閉じ込められてしまう。しかも、その部屋は高さ数百メートルの空洞の中で、当時作られたロープで宙吊りになった状態で支えられているだけということが判明する。さらに悪いことに、そのロープは1500年という年月による劣化のためにやがて切れてしまうということが明白であった。
その場にいながら、たまたまその難を逃れたGillianは仲間を救うべく行動を開始する。Gillianは、その罠の構造から、メンバーを助けるためには遺跡に隠された謎を解き明かし、罠を解除するするしかないと判断。遺跡を作ったマヤ文明の聖職者Kinixの残した手がかりを追う。
しかし、その遺跡に隠されているとされる秘宝を狙っている極悪な集団がいた。そして、Gillianにも次々と魔の手が忍び寄る。
果たして、その秘宝とは。そして、GillianはフィアンセのFredとメンバーたちを救うことが出来るのか。
という感じです。
プロットとして珍しいと思ったのは、主人公であるGillianには最初からフィアンセがいて、それが結構性格悪いというか、
「なんだコイツ?」
って思えるような描写がしてあること。しかも、陸軍の大将であるGillianのお父さんには毛嫌いされてます。
しかも、あるきっかけで、いまひとつ頼りないオーストラリア人男性が序盤で登場してきて、脇役っぽい役柄なのに、どうも取り扱いが大きい感じです。
これって、普通は死亡フラグですよね(笑)
と思いながら読み進めていくと、このフィアンセとの関係は意外な方向に進みます。なるほど、そう来たか、という感じでした。
この小説の面白いところは、1500年前に生きていたKinixが残した手がかりが、一人称表記による詳細な自伝のような体裁になっているということです。Kinixの生い立ちや、当時の様子、そしてなぜこのような遺跡を作ることになったのかなど、事細かに書いてあり、一つの物語のようになっていて、小説の所々でそれが挿入される形になっています。しかも、この自伝だけでもかなり面白いので、全体としての出来栄えに相当プラスになっていると思います。タイトルのThe
Mayan Priestは「マヤの聖職者、司祭、神官」という意味ですが、これはKinixを指しているものと思われます。
古代文明やその秘宝にまつわる話はよく見かけるものの、それを作った側の物語が一人称で詳細に語られるというのはあまり見ないパターンだったので、これはたいへんおもしろく読みました。
それ以外は、まあ王道というか、この手の物語の流れに沿ったものになっていますが、全体的なストーリーもよかったですし、キャラもそれぞれいい感じで書かれていて、何度も読み返したくなる本だと思いました。
このジャンルの話が好きな方には、ぜひお勧めしたい作品です。
この本も、読み終わった直後から、2回目を読みたくなる本でした。
あらすじは、
海洋調査船Trident号は、未知の大自然や生物を紹介するTV番組の撮影のためにカメラクルーや生物学者たちを乗せ南太平洋を航行中、救難信号を受信する。それは、1700年代に発見されたまま、誰も上陸したものがいないという絶海の孤島Henders島からだった。
Henders島は、幅が3kmほどしかない小さな島で、もっとも近い陸地からでも2200km離れた場所にあり、5億年にわたり世界から断絶した状態にあった。カンガルーやコアラなど独自の進化を遂げた生物が多数生息するオーストラリアが、大陸移動によって分離したのが7000万年前。その何倍もの期間、しかも幅3kmのきわめて小さい島で生物が独自に進化すると、どのような姿になるのか。クルーたちは新種発見の期待に喜び勇んで上陸する。
しかし、彼らを待ち受けていたのは、人類がいまだに遭遇したことも想像したこともない凶暴な生物たちであった。次々と襲われる上陸チームのメンバーたち。そしてその様子は全世界に生中継されていたのであった・・・。
という感じです。
印象としては、恐竜は出てきませんけど、ジュラシックパークと似てますかねぇ。ただ、ジュラシックパークと違うのは、そこからどう逃げるかだけでなく、地球全体がやばいことになるかも、という方向で話が進みます。
実は、あらすじもろくに知らないうちに購入したのですが、出てくる生物が結構えぐいです。あまりにも既存の生物と異なるために、形態についてかなり細かく科学的な描写が入りまして、それがまたなんというか、イメージするだけで「うへぇ」となるようなものなんですよね。こういうのに耐性のない私は「最後まで読めないかも」と思ったくらいでした。
まあ、ストーリーがとてもよかったのと、読んでいくうちに慣れたのか途中からは気にならなくなって一気に読めました。再読する気にもなったし。
ただ、もし映画化されて、ここに書いてある通りの生物が出てくるなら、見に行く勇気が持てないかもです(笑)。
BSFA(British Science Fiction Association)による、2009年の"Best Science Fiction Novel"に選ばれただけあって、話自体はとても面白かったので、未知の生物が大丈夫なら、ぜひ。
興味(と勇気)のある方は、作者Warren Fahyのサイトに行くと、登場する主な生物たちのイラストや動画を見ることができます。
www.warrenfahy.com
ハヤカワ文庫から日本語版も出ているようです。原書よりも日本語版のほうがカバーの挿絵がえぐいです……。もし原書もこの絵だったら購入してなかったです(笑)。
タイトルにあるとおり、アトランティス大陸を発見する冒険の話です。
あらすじは・・・
考古学者であるNina Wilde教授は、研究の結果アトランティス大陸のおおよその場所を特定し、調査のための資金援助を大学に求めるものの却下される。しかも、その直後に何者かに命を狙われる。
同じくアトランティス大陸を発見することにすべてをかける大富豪Kristian
Frostとその娘Kari、そして、Ninaを守るためにFrostに雇われた元SAS隊員Eddie
Chaseとともに、Ninaはアトランティスの痕跡を追って世界各地を飛び回る。しかし、発見阻止のために虐殺もいとわない秘密組織が、執拗にNinaたちを追い、それを阻止しようとする。
Ninaはアトランティスを発見できるのか、そして、秘密組織はなぜアトランティスの発見を阻止しようとするのか。
というのが主なプロットであります。印象としては、謎解きとアクションの連続ということで、インディ・ジョーンズの現代版という感じでしょうか。物語の最後では、思っても見ない方向に話が進み、非常におもしろいストーリーとなっています。
この物語の主人公である、NinaとChaseの話はシリーズ化されていて、すでに数冊が出版されているようです。残念ながら、Kindle版は2作目 の"The Tomb of Hercules: A Novel"までしか出ていないので、出るのを楽しみにしていようと思います。
Deep Fathomを読んだときも思いましたが、この本もぜひ映画化してほしい作品です。
毎日ちびちび読もうと思っていましたが、残り30%を切ったころになってから、もう止められなくなって一気に読んでしまいました。それぐらいおもしろかったです。
この手の本は布団の中で読み出すとダメですね。穏やかな場面が続くときは、ある程度読んでいると眠たくなるものの、途中で手に汗握る場面になってしまうと、目がらんらんとしてきてどうしようもありません。眠たくなるまで先に進もうと布団の中で読んでたら、結局、まったく寝られなくなり、2時間半ぐらいかかって最後まで行ってしまいました。
タイトルの"Deep Fathom"にあるfathomは「ファゾム」という主に水深を測るのに使われる単位です。そして、このタイトルどおり海底での場面が多い物語です。先に読んだ"Subterranean"といい、この作者は地面の下が好きなのかもしれませんね。
ストーリーを一言でいうと、失われた文明が残した偉大な力をめぐる冒険活劇ということになるのでしょうか。
あらすじを簡単に書くと……
太平洋全域に巨大地震が起こり、日本やアメリカを含む沿岸各国は大きな被害を受ける。
主人公Robert Kirklandは、その地震で引き起こされたある事件の調査のために、海底数百メートルのところを小型潜水艇で潜ることになり、そこで偶然、海底から突き出た巨大な水晶の柱を見つける。柱に近づくと、乗っていた小型潜水艇の通信装置が故障したり、船内時計が狂うなど、奇妙な出来事が起こる。
柱にいまだ解読されていない文字が彫り込まれているのに気がついたRobertは、それを手がかりに自分のサルベージ船とそのクルーたちとともに謎を解明する冒険に出るが、その水晶の柱に巨大なパワーが隠されているとにらんだCIAの特殊部隊に命を狙われることになる。
という感じです。
ここ何年か読んだ中でもかなりおもしろかったので、こういう話が好きな方にはおすすめです。
そういえば、この本では、物語のメイン舞台の一つに沖縄が出てきてまして、そのことから、日本に関する記述や日本語の言葉も多く使われています。また、この手の本では珍しく、ヒロインであるKarenの友人として、Miyuki Nakanoという日本人女性の大学教授が出ており、しかも準ヒロイン並みの大きな扱いとなっています。
日本の話で興味深かったのが、第二次大戦中に金塊とともに沈んだ日本の沈没船を主人公が引き上げようとする場面で、その船の名前が"Kochi Maru"なんです。名前自体は普通なんですけど、なぜかその英訳として"Spring Wind"とされていまして、最初に読んだときには「高知丸」かと思いこんでいた私は、それがなぜ「春風」となるのか分からず、「え?」と、固まってしまいました。
しばらく考えて、ふと思いついたのが、
「Kochiというのは、てっきり「コウチ」だと思い込んでたけど、もしかしたら、「コチ」かも。そうすると「東風」で「こち」と読むやん」
ということでした。そして、「東風」は春の季語なんですよね。それに気がついたときには、「やるな、作者」と思ってしまいました。英語ネイティブなのに、「東風」が春の季語だと知ってそれをあえて使うとは。いや、それとも、英語版の英和辞典では"kochi"が掲載されていたのかな……。
でも、そのあとで、妙な箇所がいくつか出てきました。
最初にMiyukiが登場したときには、"Miyuki Nakano"と名・姓の順番で紹介されていたのに、そのあとに出てくる、ある論文を書いた日本人教授の名前を引用するシーンでは、なぜか "Kimura Msaaki"と姓・名の順番に書かれていました。
(もしかして、どちらが姓で、どちらが名か、勘違いしているのかも…)
と思っていたら、やはり、その後に"Professor Masaaki"という言葉が…。ネイティブにとっては、日本語の名前は姓と名の見分けが付きにくいのかもしれません。
あと、KarenとMiyukiが夜明け前の道を歩いている時、パトロール中の沖縄米軍の兵士が、二人に止まるように叫ぶシーンがあるのですが、なぜか
"Yobitomeru! Halt!"
と叫んでいます。いきなり自分に向かって「呼び止める!」と叫ばれても、どうしたらいいのかとまどってしまいそうです(笑)。どこからこの訳語を得たのでしょうか、謎であります。もしかして、haltを辞書で調べて、それを英語のように原形で使えば命令文になると勘違いしたのかもしれませんね。
さらに、Karenが船に乗り遅れそうになったとき、日本人の船員に向かって待つように叫ぶところで、なぜか
"Ueito!" Wait!
と叫んでいます。英単語を日本語の発音に直して叫んでもしょうがないと思うのですが……。「ウエイトォ〜」と日本語発音で叫ばれるよりは、"Wait!"と英語で言われた方がまだ理解しやすい気もしますが、どうでしょう(笑)。
というように、微妙な日本語も多少出てきますが、日本や日本語が小説に出てくるというのは、おもしろいものですね。
ペーパーバック版だと850円前後で入手できるようです。
James Rollinsは私が読んだことのない作者でしたが、AmazonでDan Brownの本を探しているときに、"Customers Who Bought This Item Also Bought"の欄に、この作者の本が表示されていたんです。それで、サンプルを読んでみたところ、かなり面白かったので購入しました。Kindleだ と、最初にサンプルが無料で読めるので、助かります。
subterranean「地下に住む人・もの」というタイトルが示すように、人類が踏み入れたことのないような深さにある巨大地下空洞で古代人が住んでいたという遺跡が発見されます。しかも、見つかった遺物を分析した結果、520万年前のものと推定され、それは400万年前と言われる最初の人類が現れるよりもさらに120万年も前ということになります。彼らは一体誰なのか、そしてどこに行ってしまったのか。その謎をを解くために専門家チームが編成され探索を開始するというストーリーです。
最初は、消えた超古代文明とか、超古代人の痕跡を追う話かと思いながら読んでいくと、途中でだんだん思ってもみなかった方向に話が進み、最後には超常現象まで絡む話となり、なんというか、「なるほど、そうきたか」と思わせるような流れになっていまして、先が見えないおもしろさがありました。
特に、この古代人が誰でどこに行ったのかという謎は、物語の途中で解明されるのですが、極めて意外な顛末を迎えます。いやいや、これはもう一度読み返してみたくなりますね。こういった話が好きな方にはぜひおすすめしたいです。
Amazon.co.jp(日本語)では読者レビューが掲載されています。
Subterranean
購入して、一気に2周読みました。ニヤッとしてプッと吹き出すこと間違いなしのSFコメディです。
今から20年以上前に書かれた作品で、もともとはBBC Radio4で放送するコメディとして執筆されました。
その後小説化され、爆発的な人気を呼び、テレビや舞台劇にもなっているようです。シリーズ化されて続編もいくつか出ています。知らなかったんですけど、映画化されすでに公開されているみたいです。日本でも公開されるという話を聞きました。いまからたのしみです。
タイトルの"The hitchhiker's guide to the galaxy"というのは、作品内に出てくるガイドブックの名前からとったものです。銀河をヒッチハイクしながら旅行するのに必要な知識が書かれたガイドブックという設定で、小説内でもときどき引用されます。
話のあらすじはこうです。
銀河ハイウェイ建設予定宙域にあり、建設にじゃまな地球を除去するためにエイリアンが宇宙船で飛来します。主人公であり、ごく普通の地球人Arthur Dentは地球が破壊される直前に、15年来の友人で実はエイリアンのFord Prefectとともに地球を離れ(というか、そのエイリアンの宇宙船にのせてもらう)、他の仲間たちと宇宙を旅するという話です。
実際にこの小説を読むまで気がつかなかったのですが、終わりかけの28章にある、"The ultimate question of life, the universe and everything"の話は、20年以上前に私がイギリスの語学学校でケンブリッジ英検のクラスにいるときにリスニングのテキストに使われているのを聞いたことがありました。リスニングの教材として使われていたとはいえ、プロの役者たちが声を演じて効果音もかなりこったモノでした。
そのときはテープを聞いて、設問に答えるという練習だったんですけど、もう最後のオチがツボにはまったというか、スイートスポット直撃状態で、涙ぼろぼろ流しながら爆笑して、おなかの筋肉がめちゃくちゃ痛くなって、息が苦しくなってそれはもう大変でした。私だけではなくもう二人のクラスメートであるスイス人と、さらには先生まで同じような状態で、あれからもう10年以上経ちますけど、あのときほど大笑いしたことは後にも先にもほとんど記憶にないぐらいです。それぐらい笑えるので、ぜひこの部分はぜひ読んでみていただきたいと思います。でも、本当は、音声版のほうがおもしろいかもしれませんけど。
映画版の方は、すでに公開されていて公式サイトもありますので、リンクを張っておきます。trailerで地球が破壊されるところも見れます。ちなみに小説では1行であっさり破壊されます。はは。
The Hitchhiker's Guide To The Galaxy 公式サイト
Amazon.co.jp(日本語)では読者レビューが掲載されています。
The Hitchhiker's Guide To The Galaxy
すごいタイトルです。しかも全文字capitalで…。
この本は完全にタイトル買いです。何かおもしろい本はないかと思って、アメリカのAmazon.comの各種ベストセラーリストを適当に見てたら"On bullshit"と書いてありまして、タイトルを見た瞬間にカゴに入れてました…。私のようにタイトルを見て興味を惹かれる人も多いでしょうから、著者と出版社のタイトル勝ちですねえ。
bullshitってのはみなさんご存知だと思いますけど、辞書では「うそ、たわごと、でっちあげ」という訳がついています。でも、日本語の「うそ」や「たわごと」という言葉とはまったく別世界のような汚い言葉で、それがタイトルになっているというのはなかなか思い切ったことをしたものです。文字通りとったら「牛のクソ」ですもんね。アメリカのAmazon.comのレビューを見ると、その単語を書くのをためらう人もいて、伏字にしたりBSと略したりしている人もみかけます。日本語でたとえば『牛のクソについて』という本がもし出版されたとして(おげれつですみません)、そのレビューを書くときって、文中ではきっと『牛の…』とか、ちょっと「クソ」のところは省略したい気になるだろうって思うんですけど、それとおんなじですね。
さて、この本のもっとも大きな特徴(題名がすさまじいことを除いて)は、そのサイズであります。洋書では珍しく日本の単行本サイズです。しかも、ページが67ページしかありません。というわけで、めちゃくちゃ小さくて薄いんですよ。余白も上下左右すっごくあいてるし。いま数えてみたら一行あたりせいぜい5〜8語ぐらいしかありません。なので普通のサイズで換算すると30ページ強にしかならないんじゃないでしょうか。表紙をのぞいた厚さはなんと5mm程度しかありません。そのくせハードカバーで、容量のわりに値段も張るんですけど、もうこれは書籍というより小冊子といってもいい感じです。ただ、そのおかげで、英語学習者でも一気に読める…
とよかったんですが、実は内容のせいであっさり読めるかどうかはかなり微妙です。
たしかに、内容はまさにタイトルどおり"bullshit"についてなんですけど、ここから想像してしまうような軽い話ではなく、"bullshit"とは何か、その定義や機能、在りようを深く考察するというような、実はめちゃくちゃにお堅い、まさに哲学系の本であります。著者はHarry Frankfurtという倫理学者で、プリンストン大学の名誉教授でして、本書はそんな方が書く本そのままといっていいでしょう。
ただし、堅い話ですが話の難度自体はそれほど難しいものではないです。多分、こういう哲学的な本って学問的になると一般人がまるっきりついていけない世界なのではないかと思いますが、この本は素人でもついていけます。もともとページ数も少ないですし、著者自身も学問的に話を進めるというよりも、自分の気の赴くままに主観的に書き連ねているという感じで、どちらかというとエッセイの範疇に入ると思います。冒頭の1文からもうそんな感じです。
"One of the most salient features of our culture is that there is so much bullshit."
★salient「顕著な」
のっけからこの文を読まされた時点で、もう読む気満々でした。はは。
このほか、短いページ数の中にもニヤっとするところとか、プッと吹き出すところもあって、全体としてはとても面白く読みました。
とはいっても、それでもやはり「なるほどなあ」と感心させられるところが多々あります。この本では、特に類義語との比較や辞書の定義から考察を深めていくというやり方で、話がすすみます。たとえば、lieとbullshitとの比較とか、hambugとの比較で、それぞれに共通する要素もあるけれど、どこがどのように異なるのか深く掘り下げて分析していくところがあったり、言われてみればそのとおりと思わせることばかりで、感心してばかりでした。
英語学習者にとっては、類義語と比較している部分は英語学習上もかなり参考になるのではないかと思います。lieもbullshitもhambugも英和で調べれば、「うそ、たわごと」という訳はいずれにも載っていますし、そうすると実際に使わなければならないときに「どこが違うのか」がわかっていなければなりません。ここで取り上げられている単語については、っていうかこれらごく一部の単語だけど、使用者の内面にまで踏み込んで説明してくれているので、この点はノンネイティブならではの利点といえると思います。
リーディングの練習としては、抽象的な内容を読む練習としておもしろい教材になると思います。単語や文法、文の構造はこの分野の話としてはかなり簡単な方だと思いますが、たとえば vehicle が「伝達手段、媒体」という意味で使われるなど、やはりこういった話題に出てきそうな使われ方をしています。ただ、手元に電子辞書があれば、単語にはそれほど苦労しないのではないかと思います。それよりもむしろ、この本が楽しいかどうかは、たとえば日本語で「たわごと」と「うそ」の違いについて関心が持てるかどうかでしょうね。すこしでもおもしろいと思えるならこの本も一気に読んでしまえると思います。
Amazon.com (英語) 40を越えるレビューが載っています。
ON BULLSHIT
Amazon.co.jp(日本語)
ON BULLSHIT
TIME誌のBook Reviewで紹介されていたので、買ってみました。「直感」について詳しく考察した本です。本のタイトルにもなっている"blink"という言葉には、「まばたき」という意味だけでなく、a blink of an eye「ほんの一瞬」という言葉があるように、「一瞬」という意味をもちます。
何かを見た瞬間や何かが起こった瞬間にろくに考えもせず情報もないのに直感によって何かに気がついたり即断できたりして、しかもそれが後になって正しかったということが分かる、ということは誰にでも起こることですが、この本で著者はなぜそんなことが起こりうるのかを解明しようとしています。著者は、元はワシントンポスト紙のビジネスならびにサイエンスレポーターだったそうで、心理学や医学の専門家というわけではありません。そういうこともあって、著者自身が学術的に調査を行って難解な専門理論で説明していくという専門書タイプの本ではなく、心理学者などが行った研究の結果をかきあつめ、さまざまな事例を引き合いに出しながら、自分の「直感」に対する考えを表している本です。
この本の一番の特徴は、その構成にあります。実際に起こった「直感」にまつわる出来事やら、心理学的な研究の興味深い研究結果やら、印象としては250ページの大半が事例の列挙になっています。本書のパターンとして、例を出す⇒著者の説明と考察⇒関連する次の例⇒著者の説明と考察というのが延々と繰り返されていまして、これでもかと言わんばかりに例を出して、「こんなに例があるんだからやっぱりオレの言ってることは正しいでしょ」という話のもって行き方です。ことあるごとに、「この例だけじゃなくて、あの事例も、そのまえに書いた例も、みんなもそうだったでしょ」みたいなセリフが出てくるのはこの現れだと思われます。
「直感」について本当に学術的な結論を求めて読んでみたいと思っていると、途中で飽きてくるかもしれません。まず、事例の列挙が多すぎるということもあります。ここまで収録しなくても言いたいことは分かりますし、別に疑ってかかって読んでるわけではありませんので、さっさと話を進めてよという気になりました。米国のAmazon.comでも、いくつか読者によるレビューが掲載されていて、その中に「ページ数は半分以下にできる」などという意見がありました。本来なら数十ページですむ話を事例を多数収録してみたら本になったという感じは確かにあります。また、内容が全体的に薄めで、introductionとconclusionの章を入れると全部で8章あるんですが、どれも内容的には同じような感じで例が違うだけという印象を持ちます。レビューの中には「第一章だけでよい」などという意見もありまして、それは確かにそうかもしれません。
しかしながら、この本は非常におもしろいです。さっき2パラグラフぶんけなしましたが、実は私自身はかなりお薦めです。心理学に多少なりとも興味があるならきっと引き込まれるハズ。この収録されている例と心理学の実験結果は、もうそれだけでおもしろいです。introductionにある古代ギリシャのクーロス像の美術館による真贋鑑定にまつわる出来事の話から始まって、けんかしていないときの夫婦間の会話をほんの少し聞いただけで、最終的にこの夫婦が離婚するかどうかをかなりの確率で的中させられるという実験結果や、性別と肌の色がディーラーで車を購入するときに提示される見積価格とどう関係するかという実験、そしてオーケストラのオーディションにおいて、審査員の前で普通に演奏してもらうのと、審査員に見えないように幕の後ろで演奏してもらうのではどのように結果が異なるのか、など実際に起こった興味深い出来事や実験結果が多数収録されています。これらが読めただけで、買った甲斐があったと思いました。
最初読み始めたときは、こういった本に良くある形、つまり、著者の考えが主に書いてあって、それをサポートするために事例と研究結果が収録されているものと読んでいましたが、事例と研究結果が主で著者のコメントがおまけのようにつくという構成にだんだん飽きてきました。しかし、途中で、事例と研究結果をおもしろく読めばそれでいいかと思ったら、急におもしろく感じてきて、そのあとは一気に読んでしまいました。「直感について解明する」なんて肩を張らずに、最初から話の流れに身をまかせながら読むと、気楽に読めていいと思います。
英語的には、語彙が比較的平易なものが多いことと、短めのセンテンスが多いということもあって、この手の本にすればかなり読みやすいのではないかと思います。さらに、本の構成として、事例⇒解説というパターンを踏んでいて、それぞれにそんなに長くないので、一気に何十ページも読まなくても区切りがつけやすいということがあります。毎日ちょっとずつ読んできりのいいところでやめるということがやりやすい本だと思います。
Amazon.co.jp(日本語)
Blink: The Power Of Thinking Without Thinking
ベストセラーにもなった本ということで、いろんなところですすめられていたので読んでみました。
自閉症で人とうまく付き合うことができないけれど、数学と科学では天才的な才能を持つ15才の少年クリストファーが主人公です。
ある夜、彼は斜め向かいの家の犬が何者かによって殺されているのを発見します。そして自ら探偵となって犯人捜しをすることにしますが、その過程で思いもよらぬさまざまな事実が明らかになっていくというのが全体的なストーリーです。とは言っても探偵小説という分類にはならなくて、むしろ犯人捜しをすることによって明らかになる事実や出来事をクリストファーがどのように乗り越えて成長していくかを書いた物語です。ですので、探偵小説だと思って読まない方がよいですね。
この小説のもっとも興味深い点は、自閉症の主人公による一人称小説だということです。クリストファーがいったい何をどのように考え、行動するのかを自分自身で細かに描いていることになっていて、この本自体もクリストファーが学校でのプロジェクトの一つとして書いたという体裁になっています。そのため、実際の生活ではなかなかうかがい知ることのできない自閉症の少年の内面をかいま見ることができます。
この本を読んで驚くのは、彼が様々なことを実に論理的に考えているということです。自閉症の子供というのは人付き合いが苦手なため他人には何を考えているのか理解しにくかったり、なかなか周りものには理解しがたい行動を取ったりするので、物事を考えたり判断できないように思われがちですが、この本で描写されている彼の心の働きを見ると、そうではないことがよく分かります。彼の考え方は非常に論理的であり、彼は、好きか嫌いか、今日はいい日か悪い日かなど、普通なら感情をベースに判断することまで論理に基づいて判断します。ただし、それは彼独自の理論であり、一般的に受け入れられない場合もあります。たとえば、彼は他人に体を触れられるのを極度にいやがり、自分に触れようものならたとえ父親でも警察官でもいきなり殴ってしまいます。
「腕をつかまれた」⇒「自分は人に触れられるのが嫌いである」⇒「だから殴る」
という思考パターンはなかなか理解しがたいものがあり、そのために周りとトラブルになることも多々あるようです。
この本は彼自身が書いていることになっているので、話の流れや構成もかなり独特です。まず、章番号が1から順番に始まっていません。いきなり2章から始まって、以下
3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23・・・
と飛び飛びになっています。これ、なんの数字か分かりますか?実はこれ素数なんですよね。本書ではこの奇妙な章番号をはじめとして様々な数学的な話が出てきます。これは、彼が物思いに沈むとき数学的な問題を解いたり科学にまつわるエピソードを思い出すということによります。これらの小話は彼の性格を理解するのに役立つだけではなく、本当の数学的ウンチクとしても非常におもしろいです。たとえば、Chapter 19では、冒頭で「普通の本なら章番号はcardinal numbers(基数=1,2,3,4…)に基づいてつけるのだが、自分はprime numbers(素数)を章番号につけることにした」と述べ、その後に彼は素数の見つけ方を説明し始めるのですが、これを読んで思わず「へぇ」とうなずいてしまいました。このほかにも本書ではたくさん数学の小話が出てきますので、そういうのが好きな方にはさらに楽しく読めるようになっています。私自身はappendix(巻末補遺)で証明問題の解答が載せられている小説は始めて見ました・・・。
この小説のいいところは、全編を通してクリストファーに対する愛情が感じられるというところだと思います。特に彼の両親は彼の行動や彼を育てる負担に苦悩し、そのことで夫婦間で争いが絶えなくても、彼を暖かく育てようとする姿勢が見えますし、そのほか学校の先生や隣のおばあちゃんなども彼に対して親切に接してくれます。これら周りの人たちの愛情と、彼の淡々とした語り口が、ともすれば重くなりがちなテーマを軽妙にしかも読後感さわやかにしているのだと思います。
英語的に見ると、彼は感情を理解したり表現したりするのが苦手なため、複雑な感情を表すような表現は一切省かれています。そのせいか、文体は非常にあっさりとしています。また、自分と他人との会話では
I said, …
He said, …
I said, …
He said, …
I said, …
のように、連結する語も地の文もなくI said "セリフ "と He said, "セリフ"が交互に1ページにわたって続くなど、レトリカルな表現もほとんど見られず論理的で機械的な雰囲気が漂います。そのため、英文としては非常に読みやすい部類に入るでしょう。ボキャブラリーも難解なものはほとんど出てきませんので、中級学習者ならほとんど辞書を引かなくてもすむはずです。一部数式が出てきますが、これはまるっきりわかんなくても大丈夫です。数学がまるっきりだめな私も数式を理解するどころか、出てくる記号すら理解してませんでしたので・・・
すでにこの本を映画にするライセンスが映画制作会社に供与されたそうですので、近々映画化されるのかもしれません。どんなふうに映画化されるのか今から楽しみです。
アメリカAmazonではすでに400人以上がレビューを書いているようです。
The Curious Incident of the Dog in the night-time
日本のAmazonでも何人かレビューを書いている人がいます。
The Curious Incident of the Dog in the night-time
暗号解読もののミステリーです。昨年出版され、かなり長い期間全米でベストセラーになった本で(650万部売れたそうです)、2005年に映画化されるようです。
いやー、おもしろかったです。今年読んだ本の中で、というかかなり長い間で考えても一番おもしろかった本です。こんなにむさぼるようにして読んだ本というのは久しぶりで、ほぼA4サイズで450ページというボリュームなのに最初から最後までページをめくる手が停まらないような状態でした。寝る前に布団でちょっとずつ読むつもりで買ったんですけど、もう最初からひきこまれてしまって、20分ほど読むつもりが気がついたら1時間以上過ぎていたような状態でした。普通は、いくらおもしろくても、ちょっと一息つけるポイントというか、そろそろ眠たくなってきたのでじゃあ今日はここまでにしようって思えるところがあるんですけど、これはいくら夜遅くても眠たくならないどころか、目が冴えてしょうがなくなるので、次の日の朝おきるのがつらくなるから無理矢理途中でやめるという感じでした。。
タイトルが示すとおり、レオナルド・ダヴィンチの絵にまつわる暗号を主人公が解き明かしていくという話です。あらすじはこうです。
ある夜、ルーブル博物館の館長が殺害され死体が発見されます。彼は死ぬ前に壮絶とも言うべきダイイングメッセージを残しており(そのダイイングメッセージに使われた暗号ってのは、これだけでもうぉーって思うようなすごい代物で、本編では最後まで重要な役割を果たします)。パリ警察は、その暗号を解読するため、その夜彼と会うことになっていた主人公のハーバード大学教授のsymbologist(象徴学者)Robert Langdonを呼び出して捜査協力を依頼するのですが、話は思わぬ展開を見せ、Langdonはパリ警察の女性暗号捜査官Sophieとともに、館長の残した暗号と、それが指し示す謎を解くための逃避行に旅立つことになります。
本書で取り上げているのは、キリスト教にかかわる重大な秘密と、それを守るために組織され、Da Vinci, Newton, Botticelli, Hugoもメンバーだったという秘密結社の話で、キリストやキリスト教に関して伝わる謎に関してさまざまなうんちくが語られます。このうんちくが結構おもしろいです。キリスト教史を別の角度から見るというのでしょうか。「へぇ」と思うようなところがたくさんありました。それと、ダヴィンチの絵画についてこんなに隠された意図やら仕掛けが施されていたとは知りませんでした。本書には"Mona Liza"を始め、"The last supper"「最後の晩餐」、やら"Madonna of the rock"といった美術に興味がなくても一度は美術の教科書やらなんやらで見たことがあるような有名な絵が出てきますが、それらに、意外な仕掛けや解釈の仕方があるというのを読んで感心してしまいました。そのうち、「最後の晩餐」については、説明を読んだときはかなり驚くような事実が明らかにされます。私もどこかの美術館で見たり、雑誌で見かけたりで何回か見ているはずなのに全然気がつかなかったことなので、思わず「最後の晩餐」を掲載しているサイトをネットで検索して見直しました。そしたら、そのこの本に書かれているとおり不思議なことが絵に描かれていて、驚いてしまいました。だって、描かれている手の一つがですね、いや、ネタバレになるのでやめておきます。
あと、なんと言ってもすごいのが本編に出てくる暗号の数々です。暗号の謎解きは最初から最後までかなりの部分を占めます。そのほとんどが古代ギリシャ語やら暗号理論やらまたは西洋史やら、割と専門的な知識が必要なんですけれども、1つだけ私にも主人公が解く前に解けたやつがありました。たまたま、ダヴィンチの奇妙な癖について見聞きしていたので、「お、これは」と思ってやってみたら解けましたです。えっへん・・・っていっても簡単なので分かる人は多いと思います。立ち読みできる方はChapter 71(ハードカバー版ではP298)をご覧ください。その他の難しい暗号というのは、専門家でないと解けないものだと思いますが、説明と解き方に身をまかせていれば感心しながら心地よく読めるものだと思います。
よくよく考えてみると、かなりの長編なのにストーリー上では1日か2日しか経っていないんですよね。最初の24時間で最終章まで行ってしまうところがすごいです。
なかなかおもしろいと思ったのは、ハードカバー版の表紙には暗号が隠されていて、作者のDan Brownのサイトで出題される謎解きに使うようになっていると言うことです。何気なく、Dan Brownのサイトに行ってみたら、実は表紙には暗号が隠されているってメッセージが出るので、手元にある本の表紙をよーく見ると、本当に暗号が隠されているではありませんか。それを見たとき、あまりにすごくて背筋がゾクゾクっとする思いでした。また、Dan Brownのサイトには本人出演のTV映像やラジオのインタビューにアクセスできます。いくつか見てみましたが、なかなかおもしろかったので、リスニングの練習もかねて、興味のある方はぜひどうぞ。
英語的には、内容の割には癖のない文体で、描写もあまり抽象的なものならず、またしつこい感じがしないので、読みやすい部類にはいると思います。ボキャブラリーも難解なものが少ないので、洋書を読む方ならあまり問題なく読めると思います。学習者にとって利点なのは、1チャプターがものすごく短いと言うことです。450ページでプロローグとエピローグ入れて合計107こチャプターがありますから、単純計算して1チャプターあたり平均4ページ程度です。中には1ページで1チャプターというのもあって、リーディングがそれほど得意でない方でもキリがつけやすく途中で挫折しにくいのではないかと思います。
いずれにしても、こんなにワクワクしながら本を読んだのは久しぶりなので、大満足です。来年映画化されたら必ず見に行って、DVDも買おうと思うような本でした。
Dan Brownのサイト
ベストセラーになっただけあって、Amazonでは30以上の読者がレビューを書いています。
The Da Vinci Code
日本語版も出ているようです。日本語版では上下巻に分かれていて、なんと合計600ページを越えてます。
ダ・ヴィンチ・コード (上)
おすすめできるかどうかは非常に微妙なところですが、一応読み終わったんで、こんな本もありますよってことで紹介したいと思います。
この本は、TIME誌に掲載されていた書籍のレビューを見て購入しました。長いタイトルが示すとおり、ロゼッタストーンから古代エジプト象形文字hieroglyphsを解読したシャンポリオンとフランス皇帝ナポレオンの話です。
私としては、シャンポリオンがどのようにhieroglyphsを解読するに至ったのか、その詳細な説明とか言語的説明とか、それにまつわる古代エジプトの歴史とか、そして苦難の果てに解読成功するまでのシャンポリオンの生き様と、そして解読できたときの感動する様子が読みたくて購入したのですが、そういったエピソードは期待したほどは出てきませんでした。
タイトル通りナポレオンとシャンポリオンの話が半分ずつと、それに加えてその他歴史上の人物の話とか神話の話がそこかしこに出てくるので、シャンポリオンの活躍に期待して読むとかなりがっかりします。シャンポリオンに関する記述は50%ないかもしれません。っていうか、ナポレオンの話ってなんで書いてあるのかいまいち必然性がわかりません。別に、シャンポリオンと二人で解読するわけでもないし、単にナポレオン軍がロゼッタストーンを見つけたってだけで、なんでタイトルがNapolen
and Champollion's quest to decipher the Rosetta Stoneになるのか不思議です。
いや、確かに本書によるとナポレオンは執着といえるほど古代エジプトの歴史と文化に非常に関心を持ち、遠征時にも多数の学者を連れて行ったり、調査組織を作ったり、パピルスやら遺跡の一部を大量にパリに持って帰ってきたりして、それを見た若きシャンポリオンを目覚めさせ、後にはシャンポリオンの研究のネタを提供することになったので、解読の遠因にもなったことは間違いないですけど、"Napoleon
and Champollion's quest・・・"なんてタイトル読めば、二人の共同作業とは言わないまでも、わりと密接な関係があるという印象を持つわけですけど、小説中には二人そろって出てくるシーンがまるでなく、単にエジプトに関心があるというだけで、2人のエピソードを羅列しているだけのような気がします。ナポレオンじゃなくて、別の象形文字を解読しようとしていた研究者とシャンポリオンの話だったら、別にお互いに無関係でも、同じ目的に向かっているわけですから、同じ重さで同時に描写してもさしつかえないと思いますが、ナポレオンは別に象形文字の解読だけに生きてたわけじゃないし、解読に直接関係あるわけでもないので、タイトルも含めて違和感を感じました。
しかも、本書では2人の話がちょっとずつ交互に出てくるので、シャンポリオンの話に感情移入できそうになった頃に、場面(と年代)が大きく変わりナポレオンの話になって、今度はナポレオンの話がおもしろくなってきたら、いったんそこで終わって、今度はシャンポリオンの話に戻る、しかもその間に全く別の人物のエピソードやら神話やらが入るという感じで、なかなか熱中できない構成になっています。しかも人物が変わるだけでなく、時代も前後にジャンプしていて、次の章では今読んでいる章よりも過去の話で、さらにその次の章では今読んでいる章よりも未来の話など、たいした必然性を感じさせずかなり激しく入れ替わるので、話についていくのに一苦労しました。
各章の見出しとしてつけられている年代だけを取ってみても、
Chapter 1 1792年
Chpater 4 1824年
Chapter 6 1799年
Chapter 8 1806年
Chapter 9 1798年
Chapter 10 1823年
Chapter 11 1922年
Chapter 12 1809年
こうなりまして、かなり前後に飛んでおります。もうちっと、時系列にそった構成だと読みやすいと思うのですが……。
全体的な内容としてはシャンポリオンとナポレオンの伝記というか、古代エジプトに対する執着から見た生い立ちとその生涯って感じでしょうか。ですので、象形文字の解読は話の重要な要素ではあるけれども、それが目的ではないようです(タイトルは、もろに解読メインって感じですけど)。まだ少年のシャンポリオンが"
I will be the one! I will decipher the hieroglyphs."というセリフを言うのは、ようやく本の半分近く過ぎた頃であります……。
後半では私が楽しみにしていた、象形文字の解読について説明がされます。どうやってシャンポリオンが解読することができたのか、そのきっかけとか、あとは象形文字自体の説明もあります。この辺はかなりおもしろかったです。ただ、これに関する記述がちょっと短めというか、ページ数が抑えられているので、もう少し読みたかった。この部分は特におもしろかっただけによけい物足りなさが残りました。おいしい料理が半分しか食べられなかったという感じでしょうか。
この本は、シャンポリオンの内面というか、どのような子供時代を過ごし、どのような性格で、それがどのように語学の習得や象形文字の解読に影響を与えたかと、ナポレオンのエジプトに対する執着に焦点があるので、これらのポイントに興味がある方にはおすすめできます。
アメリカのAmazon.comを見てみると、結構読者レビューが掲載されていたので、リンクしておきます。私と同じ意見の人がいて、「あんたもやっぱりそう思う?」って思った人と、5つ星つけてる人もいて、やはり何を求めて読んでるかで変わるのでしょう。一人すごいこと書いてる人もいます…。
Amazon.com(英語)
The linguist and the emperor
上記のページにあるレビューで、読者の一人が"The Keys of Egypt: The Race to Crack the Hieroglyph Code"を薦めてましたので、これも読んでみようかなと思ってます。
洋書・和書を問わず、私の一番好きな本のリストの中で、TOP5に入るのがこの本、というかこのマンガです。この4コママンガは日本でもDaily YomiuriとHerald Trubuneに連載されていますので、ご覧になったことがある方も多いでしょう。まだHerald Tribuneが発刊されていなかったころ、このCalvin and Hobbesを読みたいがためにDaily Yomiuriを買っていたことがありました。本当は、Japan Timesの方が好きだったんですけどね。
このマンガの主人公は、タイトルの通りCalvinという6才の男の子と、Hobbesというトラのぬいぐるみです。Hobbesはぬいぐるみですが、擬人化されていて人間と同じように話します。
ぬいぐるみとその持ち主の男の子の交流というのは、ちょうど、くまのプーさんとクリストファーロビンの関係と同じですね。プーさんと違うのは、Hobbesとの会話はすべてCalvinの想像の中の出来事で、他の人からはHobbesは単なるぬいぐるみにしか見えないというところです。したがって、Calvin以外の人はHobbesは話ができないことになります。実際にはどのように表現されるかというと、Calvinと二人で話しているときにはHobbesは生きているキャラとして描かれますが、コマの中に両親や友達など他の人が出てくる場合は、ただのぬいぐるみとして描かれています。
Calvinは友達も少なくて学校ではいじめっ子にいじめられたり、逆に好きな女の子に意地悪したりするというちょっとあまのじゃくでさびしがりやな男の子で、しかもベビーシッターのなり手がいなくなるぐらいイタズラばかりします。また、想像力がありすぎて、先生をモンスターに見立ててやっつけようとしたり逃げ出したりで、周りの人たちはほとほと彼に手を焼いています。その彼の一番の親友がHobbesです。Hobbesはトラのわりには無邪気で優しいキャラクターで、時々二人でとっくみあいの大げんかもしますが、いつもCalvinのよき理解者であり、good buddyであります。
このマンガで好きなのは、プラスとマイナスのギャップでしょうか。シニカルで皮肉たっぷりな面と、作品全体に流れるユーモアと愛情深さの差が大きいというのがおもしろいです。あと、絵柄も気に入っています。
英語的には、小学生が話しているということもあって、そんなに難しくありません。逆に、日常的な内容ということもあって「簡単なことをうまく言う」英語に触れる機会が通常の小説より多いように思います。
それと、4コママンガですので、4コマ目が「落ち」になっていまして、それをつかむのがいい練習です。英語学習者にありがちなのは、あるジョークを聞いて「英語は分かるけど、冗談が理解できない」ということです。しかし、「落ち」がおもしろいと感じるかどうかは別にして、いったい何がおもしろいのか分からないのは、本当に「理解した」ことにはなりません。日本語で考えてみると分かると思いますが、誰かがジョークや皮肉を言ったとして、それに気がつかずポカーンとしてるのって、結構アイタタな感じがしませんか?
そういう意味で、ジョークや皮肉の落ちを理解するというのは、理解度の最高レベルだと思うのですが、そのいい練習になると思います。
ところで、私はこの本をイギリスで£10.99=(約2300円)で購入したんですけど、いまAmazon.co.jpで検索してみたら、1479円で売ってました。日本から取り寄せた方が高くつくと思ってがんばって持って帰ってきたんですけど、やられました・・・。
内容はまさにタイトル通りで、どうやったらタイムマシンを作ることができるかを解説した本です。アインシュタインの相対性理論とか、シュワルツシルトのブラックホールの話とかかなり専門的な話になるのですが、一応、一般の人向けというか、物理学の素人向けにかかれていることもあって、数式はE=mc2しか出てきませんし、こういった内容にしては英語もかなり平易な書き方がされています。科学用語もSFに出てくる一般的な程度のものばかりです。
出てくる科学用語の一例
mass 「質量」
gravitational field 「重力場」
centrifugal force 「遠心力」
neutron 「中性子」
muon 「μ中間子」
singularity 「特異点」
また、ページ数も私が持っている版は136ページしかないので、わりと気軽に読めると思います。
目次は
1. How to visit the future
2. How to visit the past
3. How to build the time machine
4. How to make sense of it all
となっているとおり、実際にタイムマシンの制作を考える前に、未来と過去に行くにはどうしたらよいかを解説しています。未来に行くのは理論的には割と簡単そうですが、過去に戻るのはあれやこれや大変なようです。
第3章 "How to build the time machine" では、実際にタイムマシンを構成する4つの装置が提示されていて、この図を見たときに、いやイラスト自体はちょっと子供向けのチャチなものなんですけど、とにかく、実際に図になって「この装置でこれをやって、あの装置でこれをやって」という説明を見たときに、なんかこう「本当に作れるのかもしれない」という感動がありました。
第4章 "How to make sense of it all"では、タイムトラベルにまつわる疑問について解説しています。そのうち、
「過去へのタイムトラベルが可能なら、なぜ我々は未来からの旅行者に出会わないのか」
という疑問を読んだとき、その答えになるほどと思う前に、そういう疑問を見て「あっ、ホントだ。確かにその通り」って納得してしまいました。UFOを見たとかエイリアンに誘拐されたという体験談や報告は数え切れないくらいあるのに、未来からタイムマシンで来た人に会ったという体験談はほとんど聞きませんよね。もし未来にタイムマシンができるなら、それを使って彼らの過去である我々の現在に来れるはず。映画のBack to the futureを始め、時間旅行を扱う映画や小説ってたいていがタイムトラベラーの視点で描かれることもあって、私も「タイムトラベラーに訪問される側」の視点で考えたことがなかったので、こういう疑問は新鮮でした。
先ほども書いたとおり、一応素人向けですがやはり物理の素人である私には難しいところがいくつかあって、とうていすべてを理解できているというわけにはいきませんけれども、知的好奇心を満たすための読み物として読む分にはとてもおもしろいです。
科学の読み物が好きな方にはおすすめです。
数年前に「マーフィーの法則」というのが流行し、さまざまな形式で日本語版も多数出ましたので、ご存じの方も多いと思います。Murphy's lawというのは、ある特定の法則を指すのではなく、日常生活における経験に基づいて考え出された法則のことで、特に「裏目に出る」「皮肉な結果となる」「やっかいなことになる」といった、ネガティブなことをまじめにしかもこっけいに表現する法則のことです。私の好きなものをいくつか引用してみます。
The chance of the bread falling with the buttered side down is directly propotional to the cost of the carpet.
「パンがバターを塗った側を下にして落ちる確率は、カーペットの価格に正比例する」
If there is a possiblity of several things going wrong , the one that will cause the most damage will be the one to go wrong.
「いくつかの事柄がうまくいかない可能性があるとき、一番損害を引き起こす事柄が失敗することになる。」
In order to get a loan, you must first prove you don't need it.
「ローンを借りるためには、まず最初にそれが必要ないということを証明しなければならない」
In America, it's not how much an item costs, it's how much you save.
「アメリカでは、重要なのは商品がいくらするかではなく、いくらオトクかである。」
こんな感じで、「あぁ、いえてる」とか「いいとこついてる」って思えるような法則が300ページ弱にわたって続きます。途中 introduction と preface があるだけで、一切解説はありません。中にはイマイチおもしろくないのもありますが、けっこうニヤっとできるものが多くて、何度読んでもおもしろい本です。
英語学習の教材として考えたときには、次の点が利点といえます。
英語のレベルとしてはそれほど高くありません。法則ということもあって、「定理」とか「仮説」とか「反比例する」といったそれらしいボキャブラリーもたくさん出てきますが、同じ単語が何度も何度も出てきますので、一回辞書を引いて控えておけば大丈夫でしょう。
この本自体は初版1985年で、1970年代に出版された本に収録されていた法則も引用しているようです。ですので、かなり古いですが、今読んでもやっぱり「いいとこついてる」って思います。読んだことがないので、同じものかどうか分かりませんが、アマゾンで検索してみると日本語版もあるようです。