BULL その2

前回に引き続き、アメリカの法廷ドラマ「BULL」について。

タイトルに使われている”Bull”は、主人公の名前Dr. Jason Bullから来ています。

ただし、単語としてのbullにはよく知られた「雄牛」の他に「うそっぱち、たわごと」の意味がありまして、これを念頭にあえて主人公の名前とタイトルにしたのかもしれません。

Title sequence(タイトルやスタッフクレジットを表示するイントロ部分)でDr. Bullのモノローグがあるのですが、その中で彼は自分の仕事や裁判科学について説明したあと、締めに

“The verdict you get depends on me, and that’s no bull.”
「あなたの評決は私次第である。そして、それはたわごとではない」

と言っています。やっぱり、狙ってつけたんでしょうか。

それともう一つ、言葉遊びが出てきたので紹介します。

Dr. Bullは、模擬裁判のために、自分の施設内に法廷を模したスタジオを持っているのですが、裁判に勝利したあとそこで打ち上げのパーティーをやるというシーンがありました。

そのスタジオの裁判長席は、ちょっとした仕掛けがあり、外側が隠し回転扉になっていて、くるっとひっくり返すと中はミニバーになってて、酒のボトルがいっぱい出てくるのです。

チームメンバーの一人がそこからお酒を取り出そうとしたとき、Dr. Bullが近づいてきて、

“May I approach the bar?”

と聞きます。これが、言葉遊びになっているのですね。

実は、barは日本語でも「バー」というように、酒場や酒場のカウンターを指しますが、裁判用語にsidebarというのがありまして、これは「陪審団に聞こえないように検察官や弁護士が裁判長席のそばに行って、裁判長と協議を行うこと」を指します。そして、裁判官に対してそれを要求する場合は、

“May I approach?”

とか

“May I approach the bench?”(この場合のbenchは裁判官席)

と言わなければならないことになっています。主人公のセリフはこれを引っ掛けたものと思われます。

ちなみに、”bar”自体も法律用語でもありまして、

法廷、被告席、法曹界、弁護士業

という意味があります。これを使って「司法試験」はthe bar examといいます。

あと、Oregon State Barといってもオレゴン州にある州立の酒場ではありません(笑)。弁護士会とかそういった団体です。

このほか、disbarは「~弁護士の資格を奪う」の意味です。法廷ドラマでは時々出てきます。主人公はだいたい正義とか弱者を守るために法律ギリギリの捜査とか弁護することが多いので、「そんなことしたら、資格が剥奪されるわよ」とか仲間に言われちゃうわけで、その時に”You’ll be disbarred.”ですね。はは。

なお、上記のシーンはシーズン1のエピソード2の一番最後の方にあります。

“May I approach the bar?”のセリフは、やはり洒落の部分を日本語にしにくいので、字幕では無難な言い方になっています。また、知らないと英語が聞き取れても、なんでいちいち「バーに近づいてもいいか」って聞くのか不思議ですよね。字幕みたいに「もらえるかい」とか「俺にもくれ」とか言えばいいわけで。ですので、元ネタが分かるとちょっと得した気持ちになります。Amazonビデオで見られますので、興味のある方はご覧ください!