お久しぶりです!
さっそくですが、車の「運転席」と「助手席」は、それぞれ英語で何と言うかご存知ですか?
答えは、
- 運転席 → driver’s seat
- 助手席 → passenger seat
ですね。
ここで「ん?」と思う方もいるかもしれません。“driver’s seat” はアポストロフィ s(’s)がついているのに、”passenger seat” にはついていないです。
driver’s seat は「ドライバーの席」(所有を示す)
運転席は通常一人の特定の人が座る席です。つまり、誰でも座るわけではなく、基本的には常にドライバーだけの席。「同乗者用じゃなくて」とか「他の人のものではない」という意味が強まりますので、’s(所有格)が使われます。
passenger seat は「同乗者向けの席」(用途・汎用性を示す)
一方、“passenger seat” の “passenger” にはアポストロフィはついていません。これは、”passenger” が 形容詞的に用いられているからです。
つまり、“passenger seat” は「同乗者が所有している座席=同乗者以外の人のものではない」と強調したいわけではなく、単に「同乗者向けの座席」という意味で、汎用的な用途を表したいので、アポストロフィ s(’s)は不要ということになります。
英語では、名詞を形容詞のように前に置くことで「用途」を示す表現がよくあります。
たとえば:
- coffee cup(コーヒー用のカップ)
- tennis shoes(テニス用の靴)
これらはすべて「所有」ではなく、「用途」とか「~向け」を表す表現です。
Tom’sやmyなど所有を表す語は、「他の人のものではなくて」が言いたいときに使うと考えれば、だいたい正しく使えます。
- I read a book. (単に)一冊の本を読んだ。
- I read my book. (他の人のではなく)自分の本を読んだ。
上記の例は、文法的には両方ともに正しいのですが、例2を使うのは状況を選びます。たとえば、
Tom has lent me some novels, but I read my book this morning.
トムは小説を何冊か貸してくれたけど、今朝は自分の本を読んだ。
とかなら、myが付いている方が正しくなります。「トムのじゃなくて」という意味合いを含めたいからですね。
ところが、
A: What did you do this morning? 今朝は何をしたの?
B: Oh, I read my book. ああ、自分の本を読みました。
というと、聞き手としては「なぜ『自分の』とわざわざ言ったのか」と意図が掴みきれなくて一瞬悩みます。
日本語でも「今朝、何してたの」と聞いて、「本読んでた」は普通の答えですが、「自分の本読んでた」は、「自分の」に何か意味や意図があるのかと一瞬考えますよね。
passenger seat も同様に、「(他の人のものではなくて)同乗者の席」が言いたいわけではなく、あくまで汎用的に「同乗者向けの席」を表した表現と言えます。
ちなみに、passenger seatですが、厳密には同乗者用の座席ですので、ドライバーの隣にある「助手席」だけでなく、後部座席も指し得ます。
- Mary drove, and I took the passenger seat.
メアリーが運転して、私は助手席に座った。 - Mary drove, and I took a passenger seat in the back.
メアリーが運転して、私は後部座席に座った。
例1は、“the”が使われているので、おそらく助手席を指すものと推測できます。後部座席は2人分以上あるので、いきなりは特定できないからですね。つまり、いきなり話に出てきて特定できるということは、もともと一つしかない同乗者用座席ということで、助手席だろうと。「前にある」と強調したい場合は、the front passenger seatということもできます。
逆に2つ目の例は、後部座席が複数あり、そのうちの一つに座ったということなので、冠詞はaになります。また、この場合はin the backなど「後部にある」をつけたほうがわかりやすいです。なぜかというと、”passenger seat”は運転席以外の座席ですから、助手席も入りうるので、aをつけただけだと「(助手席と後部座席を合わせた)同乗者用座席のうちの一つ」という取り方が可能なので、後部座席のみを指すとは言い切れないからです。
とはいえ、driver’s seatとpassenger seatで、アポストロフィーありとなしを逆にしても普通に通じるので、実用上は問題ありません。
実は私も、留学中だったかに、この使い分けを間違えて、ネイティブに指摘されたことがあります。そのときは、「へえ」と思っただけでしたが(笑)、今になってよく考えると、なかなか奥深い理由があったのですね~。