日本語には
生麦生米生卵
隣の客はよく柿食う客だ
のように 早口言葉 がありますよね。英語にも同じようなものがあり、それを “tongue twister” と呼びます。これは “tongue(舌)” + “twister(ねじるもの)” という意味で、スムーズに読むのが難しく作られたフレーズや文のことです。
いくつか有名なものを紹介します。
① She sells seashells by the seashore.
(彼女は海岸で貝殻を売っている)
このフレーズでは、/s/ と /ʃ/の音の違いがポイントです。
- /s/ は、息を歯の隙間から出す音。seeは「スィー」
- /ʃ/ は、日本語の「シュ」から/u/の音を抜いたもの。sheは日本語の「シー」に近い。スペルがshのところはだいたいこの発音
例えば、“see”(見る)と “she”(彼女)は、発音が全く違います。上記の早口言葉では、sellとseaが/s/で、she, shell, shoreが/ʃ/の発音です。この tongue twister を練習すると、sとshの発音を区別する練習になります。
② Red lorry, yellow lorry.
(赤いトラック、黄色いトラック)
このフレーズは、/r/ と/l/ の区別 する練習になります。
- /r/ は、舌を丸めて口の奥で発音する音。
- /l/ は、舌の先を上の歯と歯茎の付け根あたりにつけて発音する音。
日本語には /r/ と /l/ のはっきりした区別がないため、この区別が難しいと思う方が多いです。5連続つまらずに言えるまで練習してみてください。
③ Peter Piper picked a peck of pickled peppers.
これは英語の童謡の一部です。全文は下記の通りです。
Peter Piper picked a peck of pickled peppers.
A peck of pickled peppers Peter Piper picked.
If Peter Piper picked a peck of pickled peppers,
Where’s the peck of pickled peppers Peter Piper picked?
(ピーター・パイパーは1ペックの酢漬けのトウガラシを摘んだ)
(ピーター・パイパーが摘んだ1ペックの酢漬けのトウガラシ)
(もしピーター・パイパーが1ペックの酢漬けのトウガラシを摘んだなら)
(その1ペックの酢漬けのトウガラシはどこにあるの?)
※peck「ペック」は穀物などの単位で1 peckは約9リットル
これは発音そのものはそれほど難しくないので、どれくらい早口で言えるかですね。pickとpeckがよく似ているので、これにつまづかなければ速く言えます。
余談ですが、35年ほど前に私が通っていたイギリスの語学学校での授業で、上記のような早口言葉を習いました。そのときに、自分の国の早口言葉を教えるという課題もありました。私も日本語の早口言葉をいくつか思い出したのですが、結局
東京特許許可局
を紹介しました。英語でいうと、Tokyo Patent License BureauとかTokyo Patent Permit Officeといった感じでしょうか。クラスメートはイタリア人とかフランス人、スイス人などが多かったのですが、みんな苦労してました。特に「許可局」のあたり。母国語ではないので当然なのですが、「許可局」のいいにくさは世界共通なんでしょうか。
私も彼らの国の早口言葉を教えてもらったのですが、そもそも、彼らの言語が読めないので(笑)、まずは一語ごとに発音を教えてもらうところからでしたね。
この他、「東京特許許可局」以外にも「かえる ぴょこ ぴょこ みぴょこ ぴょこ あわせて ぴょこ ぴょこ むぴょこ ぴょこ」とか「赤巻紙、青巻紙、黄巻紙」も思いついたのですが、当時TOEIC500点ぐらいの私は、英語で説明できねーと思ってやめました(笑)。なにせ30年以上前ですからネットもなく、英和辞典とショボい和英辞典しか手元にない状態だったんですよね。まあ、巻紙なら”rolled paper”って言えばいいと今なら分かりますが、カエルの奴はそもそも直訳のしようがありませんし。
あ、でも、よく考えたら、「ぴょこ」はカエルが跳ねるときの擬音語(onomatopoeic word)と考えればhopとかboingとか言えばいいのか。でも「みぴょこ」って3回跳ねたってことでしょうけど、「ぴょこぴょこ」で2回しか跳ねてない……いや「みぴょこ」が3回目のジャンプだと考えるといけそうか……でも、その直後にある「ぴょこ」で4回跳んだことになるけど「むぴょこ」と計算が合わなくなる……。ので、「みぴょこ」と「むぴょこ」の直後の「ぴょこ」は語調を整えるために入っているだけで計算には入らない……ということですかね。
まあ、そもそも言葉遊びの文言を論理的に突き詰めるのは無粋な話なんですけれども、説明するならちゃんと理解してないと英語にできないというのはあります。ただ、一つ確実なことは、これを当時の私に英語で説明しろとか言われても絶対無理でした(笑)
話が逸れましたが、英語の tongue twister は、個々の発音の練習になりますし、日本語では使わない口の筋肉を鍛えたり、リズムを意識したりするのも役立ちます。 まずはゆっくりと正確に発音し、慣れてきたらスピードを上げてみましょう。だんだん発音に注意するくせが付きますよ。