前回の続きです。
旧版「TOEIC(R)TEST文法完全攻略 」を執筆した1996年~1997年以降、最もトピック的に変わったのが、インターネットと携帯電話に関わる話でしょう。
当時、インターネットはありましたが、まだまだ新しい技術であり、一般人にとっては馴染みの薄いものでした。そもそも、光回線による常時接続なんてものはなく、3分10円で自宅の電話回線を使って、プロバイダに電話をかけて接続するものだったのです。なので、お金が結構かかりました。もったいないから、サイトが表示されたらすぐ電話を切る感じです。しかも、電話をかけているのと同じ状態なので、ネットに繋いでいるときにはこちらは話し中になりますし、家族が使いたくても使えないこともあり、
「今から電話するから、回線切ってよ」
「あ、はい」
みたいな会話はどこのユーザーのお家でも行われていたと想像します。
ちなみに、今では回線が混むと低速になってしまいますが、当時は混雑する時間はプロバイダが話し中になり、そもそも繋がりませんでした、はは。
携帯電話はガラケーが流行り始めた頃ですね。持っていない人の方がまだ多かったと思います。携帯電話でインターネットに繋ぐこともまだできませんでした。
…という時代だったので、TOEICではこれらにまつわる話はほとんど出なかったように思います。今、当時の公式問題集(英語版)をめくってみましたが、ざっと見たところ、リスニング、リーディングともに出てないですね。かろうじてPart 7の求人広告の問題で、”e-mail”という単語が使われているのを見つけましたが、「電話、FAX、Eメールによる申し込みは受け付けられない」って書いてました。なるほど……。
というか、よく見るとこの公式問題集の初版は2001年でした。その当時でもこの程度しか話題に出てこないとすると、96年~97年ごろの試験には全く出題されていなかったかもしれませんね。
それで思い出しましたが、当時は、Eメール自体が眉唾というか、正式なやり取りには向いていないという考え方がまだ強くて、ビジネス文書をメールで送るなんてけしからんという風潮もありました。雑誌とかのマナー特集記事でも「Eメールを社外とのやり取りに使うのはアリ?」みたいなのを見かけた覚えがあります。
余談ですが、それより以前にワープロ(パソコン以前の専用機)が出回り始めた頃、ちゃんとした文書は手書きで!みたいな風潮があったので、似たようなものでしょうか。コミュニケーションに関わるテクノロジーはマナーと密接に連動しているので、むべなるかなかと。今でも、履歴書とエントリーシートは手書きかワープロか分かれるくらいです。そういえば、私が大学生だったとき、ゼミの担当教授が古風な先生でワープロ禁止だったので、原稿用紙で数十枚分の卒業論文を全部手書きで書きました。しかも、修正液も禁止という……。
それを思うと、隔世の感があります。今のTOEICでは、オンラインで注文だの、履歴書はメールで送ってくれだの、さらには、長文の形式がメールやチャットだったりしますし。
そういうこともあって、こういったトピックも含めるべく、新版の訳してチェックと練習問題をほぼ全て書き換え、あるいは追加・修正するなどして、全面刷新しました。
たとえばこんなのが入ってます。
「顧客からの問い合わせを極力減らすために、私たちは、広いトピックをカバーしたQ&Aのページを当社のウェブサイトに作成したほうがいい」
「私のスマホはOSを自動的にアップデートした後、インターネット接続がものすごく遅く、不安定になった」
「自分の動画の中で、そのインターネットセレブリティは、ほとんど知られていないけれども、もっと多くの評価や称賛に値する音楽家を紹介しており、結果として、彼らのいくつかの作品はバズっている」
加筆・修正したものとしては、たとえば、
■旧版
「その店は注文用紙と共に最新のパンフレットも送ってきた」
■新版
「その店は、オンラインで商品を注文するためのQRコードが付いた最新のパンフレットだけでなく注文用紙も私たちに送ってきた」
などですね。
こんな感じで、Part 5の短文穴埋めだけでなく、リスニングやPart 6(長文穴埋め)、Part 7(長文)の記事やチャットなどにでてきそうな様々なスタイルで英作文と読解の練習ができるように作成しています。
ちょっと長くなったので、続きはまた次回に。