ご無沙汰いたしております。
まもなく発売になる新刊の執筆と出版作業に取り掛かりっきりで、普段のレッスンとそれ以外のことは何もできない状況が何ヶ月も続きましたが、ようやく私の作業も終わりが見えてきて、ほっとしているところです。
少し時間に余裕ができたので、これから発売までの間、何回かに分けて新刊の内容をお知らせしていこうと思います。
まず、タイトルは「TOEIC(R) L&R TEST 文法完全攻略」であります。すでに先月の終わり頃からオンライン書店に掲載されていたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
タイトルからおわかりのように、「TOEIC(R)TEST文法完全攻略 」の改訂版です。
旧版はもう25年ほど前、1998年に出版したもので、それ以来ご好評をいただき順調に版を重ね19万部以上の発行部数となりました。お読みいただいた方には厚く御礼を申し上げます。
この25年の間にTOEICも大きく様変わりしました。それに合わせて大幅に改定したのが本書です。
少しここで旧版執筆時から現在までのTOEICについて振り返ってみたいと思います。
旧版を執筆したのは確か、1996年~1997年ぐらいにかけてで、その後TOEICの問題形式が最初に大きく変わったのが2006年でした。さらにその10年後、2016年に現行の形式になりました。
この2回の変更によりリスニングでは、3人の会話や、図表を読む形式が取り入れられ、イギリス・オーストラリア・ニュージーランドのアクセントも使用されるようになりました。最初は、図表などはなく、会話は2人によるA-B-Aという形式のみ、話者もアメリカ英語のネイティブスピーカーだけだったように思います。
また、Part 3の会話とPart 4の長文では、問題数が2~4問と設問ごとにバラバラで、設問を先読みするときには、次の設問の問題は何問なのかを当てて備えるという作業も必要でしたね。てっきり3問だと思いこんでいたら、実は4問だったとか、結構パニクる構成になってました。
あとは……、そうそう、Part 1の写真問題が20問だったということでしょうか。そうなんです。昔は20問もあったんですよね。その後2006年にいったん10問に減って、現在では6問と減り続けてますね。Part 1は結構初心者の方も正答率が高いので、たくさん出題しても高得点者との差がつかなかったのかもしれません。
リーディングで一番変わったのは、やはりPart 6でしょう。現在は、長文穴埋めですが、昔は短文間違い探しでした。一つの英文に下線が4つ引かれて、そのうちひとつが文法的・意味的におかしいってやつです。全部で20問でした。この練習も兼ねて、旧版「TOEIC(R)TEST文法完全攻略 」でも練習問題「Check & Check」で下線なしの間違い探し問題を収録していました。
この間違い探しは「いかに正確に使える」かを測るにはいい形式だと思ってます。穴埋めだとどうしても、穴の箇所と選択肢を見ればTesting Point(何を問うているのか)がすぐわかるので、それに基づいて正答が出しやすくなるという側面があります。間違い探しの場合は、それがかなり軽減され、自分の書いた英文を見直すのと同じ段取りで英文を読むことになるので、より実際的だと思うんですよね。そういうこともあって、私としてはいろんな文法問題の中で、この間違い探しがかなり好きな形式なので、なくなったのは残念でした。
ただ、これはTOEICがコミュニケーションの試験であるということが関係あるかもしれません。通じるかどうかだけで考えれば、間違い探しの英文はそのまま間違ったままでもたいてい通じますから。
たとえば、
✕Mr. Smith enjoy to play tennis.
という文で、enjoyがenjoysだと気が付かなかったところで、そして、to playをplayingにしなければならないと気が付かなかったところで、ネイティブからするとこのままでも不自然なだけで意味は通じるでしょうし、実際の会話なら、状況やそれまでの文脈もあってよけいに問題なく通じるでしょう。なので、コミュニケーションできるかどうかを測るのがメインな試験では、なくてもよいと判断されたのかもしれません。
逆に、間違い探しがTOEFLのITPに残っているのは、現地の大学行ったらある程度正確にレポート書けないといけないってことが関係あるかもしれませんね。たとえば、上記の英文の間違いに気が付かないなら、自分で英文を書くとき同じ間違いをしても気が付かないということですし。
一方、TOEICの長文で変わったのは、複数の長文を読まされるmultiple passagesが出題されるようになったということです。最初は、全てSingle passageの問題しかありませんでした。その後、長文2つでセットのDouble Passageが出題されるようになり、さらにその後、3つの長文でセットになったものも含まれるようになりました。より実用的な読解力を測るということでしょう。それに伴い、文法問題が40問→30問と減少し、Part 7は40問→48問→54問に毎回増えています。
また、問題形式だけでなく、取り上げられるトピックも変わりました。
……と、ちょっと長くなったので、これについてはまた次回書きたいと思います。